NBAドラフト2022:デューク大FINAL4の原動力、パオロ・バンケロ

デューク大のフレッシュマン、パオロ・バンケロ

屈強なフィジカルに何でもこなすオールラウンドなスキルを備えたスキルビッグ。

NCAAトーナメントでは、その卓越したオフェンススキルでデューク大をFINAL4に牽引した。

特別大きな訳でも、突出した身体能力を有する訳でも無いが、シューティング、ハンドリング、パッシングとオフェンススキルを高次元で揃え、今ドラフトで最も無難な上位ピックとなるだろう。



パオロ・バンケロ

所属:デューク大
学年:フレッシュマン
生年月日:2002年11月12日
ポジション:PF
出身:オデアハイスクール(ワシントン州)
主な受賞歴:Consensus second-team All-American (2022)/ACC Rookie of the Year (2022)/First-team All-ACC (2022)
シーズンスタッツ:33.0分17.2得点7.8リバウンド3.2アシスト0.9ブロック1.1スティール
FG47.8%/3PT33.8%/FT72.9%

ハイライト

成熟したスキルで高校バスケ界を支配

ワシントン大で活躍し、WNBAドラフトでも指名を受けたロンダ・バンケロ(旧姓:スミス)を母に持つパオロ・バンケロ。

ちなみに、父がイタリア系という事でイタリアのパスポートも保有し、イタリア代表としてプレーが可能。

バスケットボールに専念するまでは、アメリカンフットボールもプレーし、QBとして高い評価を受けていたデュアルアスリートだ。

インサイドプレーヤーながら、高校生の時点でオールラウンドなスキルを有し、身体能力でに頼らない大人びたプレーで高校バスケ界を支配。

ペイントエリアでは巧みなステップワークでディフェンスを圧倒し、ハンドラーまでもこなしていた。

勿論、McDonald's All-Americanなどの高校主要オールスターにも選出されている。

バンケロの両親共にワシントン大出身だったが、高校卒業後は両親の母校ではなく、"One and doneの名産地"デューク大進学の道を選択した。

カレッジでも抜きんでたオールラウンダー

鳴り物入りでデューク大に進学したバンケロ。

シーズン初戦の対ケンタッキー大戦で、22得点7リバウンドの鮮烈なデビューを飾ると、その後もシーズンを通して安定した活躍を続けた。

今シーズンの全39試合の内、1桁得点に終わったのは僅か2試合という事からも、バンケロのプレーの安定感がお分かり頂けるだろう。(ちなみに1桁得点に終わった2試合は、共にバージニア大戦。)

レギュラーシーズン終了後には、カンファレンスの新人王、Consensus second-team All-Americanにも選出され、カレッジ屈指のプレーヤーとの地位を確固たる物とした。

レギュラーシーズン中も素晴らしいプレーを見せていたが、大一番のNCAAトーナメントでは、5試合平均18.8得点7.6リバウンド3.4アシストと更にギアアップ。FG成功率50%3PT成功率52.6%とパフォーマンスの効率も向上させ、名将コーチKのラストシーズンに、チームをFINAL4に導いた。

ボール渡せば何とかしてくれる安心感

高次元でオールラウンドなスキルを揃えるバンケロは、ボールを預ければ得点、アシストでプレーを完結してくれる安心感のあるプレーヤー。

自身より小さなプレーヤーに対してはインサイドで押し切ったかと思えば、大きなプレーヤーは相手にはスキルと機動力で悠々と手玉に取ってしまう。

得点だけでなく、ディフェンスが寄れば、優れたパッシングスキルと視野の広さでチームメイトにアシストを供給。シーズン平均の3.2アシストは、カレッジのインサイドプレーヤーとしては驚異的な数字である事を覚えておいてほしい。

アウトサイドシュートの成功率が懸念されていたが、前述の通りNCAAトーナメントではFG成功率50%3PT成功率52.6%を記録。

SWEET16で対戦した、カレッジ屈指のディフェンス力を誇るテキサステック大戦でも、22得点4アシスト。しかもFG成功率58.3%3PT成功率75%(3/4)という効率的なプレーを見せた。

シーズン当初は技術が高すぎる故、タフなミッドレンジジャンパーを打つ傾向が見られてが、NCAAトーナメントでは、積極的にインサイドを攻め、スペースがあれば3PTとプレーが洗練されていった。

1対1を得意しているイメージが強いが、シーズンを通して見ると、アイソレーションでは0.83PPP(59thパーセンタイル)に対し、ポストアップでは0.93PP(72thパーセンタイル)と、ポストアップからの方が効率の良い数字を残している。

しかしながら、タフショットが目立っていたにも関わらず、ジャンプショットでは0.98PPP(75thパーセンタイル)を記録しており、シュートスキルの高さが伺える。NCAAトーナメントでの活躍を見ても、プレーのセレクションの改善で、プレーの効率は飛躍的に改善するだろう。

また、リング周辺では1.33PPP(81thパーセンタイル)を記録。自身で得点をクリエイトするだけでなく、フィニッシャーとしても優秀である事は覚えておきたい。

ディフェンスには懸念もあるが

成熟したオフェンシブゲームには定評のあるバンケロだが、ディフェンスには懸念の声も。

確かに、優れたディフェンシブプレーヤーとは言えないかもしれないが、NBAでPFとしてプレーするに十分なサイズ、体重250ポンド(114kg)の屈強なフィジカル、PFとしては十分以上の機動力があり、オンボールのディフェンス、特に1対1のディフェンスではオフェンス同様抜群の強さを見せる。

1対1のディフェンスでマッチアップの得点を0.54PPPに抑え込んだ事も、バンケロが優れたオンボールディフェンダーである事を証明している。

身体能力押しのプレーヤーでは無いが、デューク大での測定では、助走有りの垂直跳びで40インチ(101.6cm)以上を記録したと言われている。

オフボールのディフェンスはポジショニングや意識の改善が必要かもしれないが、それは経験や所属チームの育成で何とでもなる話。

NBAルーキーは一般社会で言えば新卒1年目。あんまり完璧を求めるのは酷な話で。出来ない事に目を向けるよりも、長所に浮かれる方が僕は好き。

今年の上位指名候補で最も無難なピックに

今年のドラフト上位指名候補には、バンケロの他に、ゴンザガ大のチェット・ホルムグレン、オーバーン大のジャバリ・スミスJrとオールラウンドなスキルビッグの名前が挙がるが、その中でも現時点でのフィジカル、スキルの総合的な完成度ではバンケロが1番だと僕は思っている。

個で局面を打開し、プレーを完結させる力のあるバンケロはプロ向きのプレーヤーだろう。

純粋にオフェンススキルのレベルが高く、"ハズレないだろうな"という無難さは、デューク大の先輩であるジェイソン・テイタムに通ずる所がある。

一方で、ボールを持ってこそ輝くタイプなので、バンケロにある程度のボールを任せてくれるチームに行ってほしい。



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