2015-2016シーズンのチノヒルズハイスクールの話

その言動でも注目を集めるボール三兄弟。

長男のロンゾが2017年にドラフト指名を受け、NBA入り。三男のラメロも今年晴れて、ドラフト指名を受け、次男のリアンジェロもデトロイトピストンズとエキシビット10契約を締結。

晴れて3人揃ってのNBA入りを達成し、ボール三兄弟への注目が再度高まってる。

そんな事もあって、ボール三兄弟の名前を全世界に知らしめた2015-2016シーズンをちょっと振り返ってみようかなと。

35勝0敗の無敗でシーズンを終える


まず初めに、何故このシーズンのチノヒルズハイスクールが現在まで語り継がれる伝説的なチームなのかというと、それは単純で、このシーズンのチノヒルズが他のどのチームよりもエキサイティングなスタイルで圧倒的な強さを誇っていたから。

長男ロンゾの高校最後のシーズンとなった2015-2016シーズン。チノヒルズはシーズン成績35勝0敗で、無敗のままカリフォルニア州チャンピオンに輝いた。

ボール兄弟の入学までは、バスケにおいてその名を全米に知られることの無かった公立校のチノヒルズだったが、ロンゾの入学以降、徐々に力を付け、2015年には州大会で準優勝を達成。

そのチームに三男のラメロと、2020年のNBAドラフトで1巡目指名を受けた、オニエカ・オコングが加入した事で、一躍全米でも屈指のチームへと飛躍を遂げてた。

このシーズンの35勝の中には、RJ・バレットやブルーノ・フェルナンドを擁したモントバードアカデミー、バム・アデバヨを擁したハイポイントクリスチャンアカデミー、ザック・コリンズを擁したビショップゴーマンハイスクールと、将来のNBAプレーヤーを擁する強豪から得た勝利が多い点も押さえておいてほしい。

無類の強さを誇ったチノヒルズだったけれど、カリフォルニア州の規定により、全米の強豪が招待されて開催された"Dick's Sporting Goods High School National Tournament"には不参加。

アメリカの高校バスケには全米大会が無いため、カリフォルニア州大会決勝がシーズン最後の試合だったが、このシーズン、アメリカを最も熱狂させたチームはチノヒルズで間違いなかっただろう。

何故チノヒルズは伝説的なチームとなったのか?

シーズンを無敗で終えたチノヒルズだが、同様にシーズン無敗を達成したチームは、これまでにも存在した。

では、何故このシーズンのチノヒルズは伝説的なチームとなったのだろうか?

その理由は彼らがどのチームも追いつけないアップテンポでエキサイティングなバスケットを展開していたからだろう。

当時のチノヒルズは、オールコートプレスからのゾーンディフェンスを敷いていた。

相手のミスを誘発し、速攻を展開するアップテンポなバスケットボールを1試合継続。極端なまでに速いテンポのプレーを続けるチノヒルズを止める事の出来るチームは皆無。

8分×4ピリオドの計32分間が主な高校バスケにあって、100点ゲームを連発するチノヒルズのスタイルは大きな話題を呼んだ。

チノヒルズのディフェンスにおいて、2-3ゾーンの前列を務めたラメロとリアンジェロには、堅牢なディフェンスよりも、スティールや速攻が重視され、ボール兄弟がディフェンスをしないというイメージは、このスタイルから来ているところも大きいのでは?

扇の要、ロンゾ・ボール

このチームにおいて、攻守の要であったのが、高校最上級生だったロンゾ・ボール。

オフェンスでは絶対的司令塔としてアップテンポな展開を演出し、ディフェンスでは高い運動能力を駆使し驚異的な範囲をカバー。

特にディフェンスでの貢献度は絶大で、スティール、ブロック、リバウンドと縦横無尽にコートを駆け巡り、チノヒルズの特異なスタイルを支えた。

ロンゾ無くしては、他のチームを圧倒したスタイルは成り立たなかったと言って過言ではないだろう。

その活躍が認められ、シーズン終了後には高校最優秀選手に贈られるネイスミス賞をはじめ、多くの個人賞を受賞した。

影の功労者、イーライ・スコット

チノヒルズの話をすると、中心はボール兄弟やオコングになるけれど、実は影の功労者は5人目の男、イーライ・スコット。

癖の強いプレーヤーが並ぶチノヒルズにあって、運動能力とオールラウンドなスキルに優れるスコットは繋ぎ役として黒子に徹していた。

ディフェンスではリバウンドに強く、オフェンスではパスを散らし、合わせも上手。

尖ったプレーヤーばかりのチームを、ロンゾと共に支えたのがこのスコットだった。

高校卒業後はロヨラメリーマウント大に進学し、今年から最上級生に。

2020年12月11時点では、5試合を消化し平均15得点10.4リバウンド3.8アシストオールラウンドに活躍。

あまり話題にはなっていないけれど、彼も十分にNBA入りの可能性があるプレーヤーだろう。

栄華は長く続かず...

2015-2016シーズンに伝説的な強さを誇ったチノヒルズ。

長男のロンゾが卒業しても、翌年もロンゾ以外の4人を中心に全米屈指の実力を維持。ラメロとオコングーが2019年までは高校に在学予定だったこともあり、2人の卒業までは、黄金期が続くと思われていた。

しかし、そのチノヒルズの栄華は長くは続かず。

2017-2018シーズン開幕を前に、新ヘッドコーチのデニス・ラティモアのスタイルがボール家が求めていた物と乖離が大きく、軋轢が深刻化。

ラメロは高校を退学し、チームを去ることに。チノヒルズとボール家の関係は、突然終わりを迎えます。

ボール家の去った後、それまでの様な注目を集める事はありませんでしたが、オコングはチームの大黒柱となり、ペイントエリアの支配力が劇的に成長。

ボール家が残っていれば、オコングがここまで成長する事は無かっただろう。

その後、リアンジェロの万引き、兄弟揃ってのリトアニア行き、ラメロの高校バスケ電撃復帰など、様々なエピソードがあるけれど、それはまた別のお話。

前にも少し触れた通り、シーズンを無敗で終えた公立高はチノヒルズだけではない。

2016-2017シーズンのネイサンヘイルハイスクール(ワシントン州)はマイケルとジョンテイのポーター兄弟、PJ・フラーを中心に全米強豪をなぎ倒し、29勝0敗でシーズン無敗を達成。

2017-2018シーズンにも、アイザック・オコロとシャリーフ・クーパーを擁したマッキーチャンハイスクール(ジョージア州)が32勝0敗でシーズン無敗を達成している。

では、何故チノヒルズばかりが話題に上がるのかと言われれば、やっぱりボール3兄弟のキャラ立ち具合とエキサイティングなプレースタイルからかなぁ。

そう思うと、プレースタイルにしろ、ボール兄弟の育成にしろ、このチーム1番の貢献者はボール兄弟の父、ラバー・ボールだったのかもしれない。

コメント