さて、今年も遂にNCAAトーナメントが開幕。
下位シードが上位シードを撃破するアップセットが続き、今年も正に"March Madness"の様相を呈している。
中でも1番の波乱はパデュー大対フェアリーディキンソン大(FDU)の1戦だろう。
東地区の第1シードでトーナメントに乗り込んだパデュー大は、テキサスサザン大との第16シードを争う"First Four"に勝利したFDUと対戦。
下馬評ではパデュー大が圧倒的有利と見られたが、FDUが63-58で勝利する大波乱。
第1シードが第16シードに敗退するのは、バージニア大がメリーランド大ボルティモアカウンティに敗れた2018年来、史上2度目の出来事だ。
大黒柱を攻めたFDU
今年のパデュー大のエースはカナダ出身のビッグマン、ザック・イーディ。
登録身長7フィート4インチ(223.5cm)の巨人は、今季22.3得点12.9リバウンドを記録。
カンファレンスのレギュラーシーズン、トーナメント共に最優秀選手賞を受賞し、All American 1st Teamにも選出。Sporting News選出の全米最優秀選手にも選ばれたカレッジを代表するビッグマンだ。
対するFDUはNCAA公式によるNETランキングで全363チーム中301位。(パデュー大は同5位)
ロスター入りしたメンバーの最長身も6フィート7インチ(200.7cm)で、下馬評ではパデュー大の圧倒的有利と目された。
高さで劣るFDUは、オフェンスで高さはあるもののクイックネスに欠けるイーディへの"スピードのミスマッチ"を徹底的に攻めた。
スクリーンに対してスイッチをしても、イーディは速さに勝るガードやウイングを効果的に守る事が出来ず、そこからFDUの得点に結びつけられた。
試合を決めたFDUの終盤の3PTもイーディが絡んだスクリーンプレーから生まれている。
対するパデュー大も高さの利を活かす為にイーディにボールを集めようとするが、FDUのディフェンスや第1シードのプレッシャーからかTOを多発。FDUの9TOに対してパデュー大は16TOとミスが目立った。
イーディは21得点15リバウンドと気を吐いたものの、FDUの勢いを止める事は出来ず、優勝候補の一角と見られたパデュー大は初戦でトーナメントを去った。
バスケットボールにおいて"高さ"で優位に立つチームが有利な事も事実だが、スクリーンが多用される現代バスケではスピードのミスマッチは致命的な弱点になり兼ねない。その弱点を的確についたFDUのゲームプランが引き寄せたアップセットだった。
FDUのショーン・ムーアが地元でヒーローに
この日、一躍ヒーローとなったのがFDUのショーン・ムーア。
FDUの勝利を決定づける3PTを決めただけでなく、ディフェンスでも躍動し、チームハイの19得点5リバウンド2ブロック1スティールを記録。
特に終盤の活躍は圧巻で残り2分を切ってからだけで5得点1スティール1ブロックとチームに勝利を引き寄せた。
シーズン平均得点は1桁。これまでのシーズンハイも18得点だったムーアだが、NCAAトーナメントという大舞台でシーズン1番のパフォーマンスを見せた。
試合時間残り1分5秒にイーディのチェックを受けながら堂々と3PTを放った様は、正にヒーローそのもので、シーズンの3PT成功率が3割を切るプレーヤーには見えなかった。
実は、ムーアはこの日の会場となったNationwide Arenaの所在地であるオハイオ州コロンバスの出身。
FDUへの転校前はNCAAディビジョン2でプレーしていたプレーヤーだが、全米の注目を浴びる一戦で活躍し、地元でヒーローになった瞬間だった。
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