NBAドラフト2020:実際どうなの、コール・アンソニー

今年のドラフトで上位指名候補に名前が挙げられているノースカロライナ大(UNC)のコール・アンソニー。

高校No1ガードとして鳴り物入りでUNCに入学し、デビュー戦でカンファレンスの新人デビュー記録を更新する34得点を記録。カレッジでの順風満帆な活躍を予感させました。

しかし、その後は膝の故障で戦線離脱し、その間にUNCは大きく負け越し。コール・アンソニーの復帰後も目下6連敗中でシーズン成績は10勝16敗。チームを勝たせることの出来ない彼の実力に疑問の声も上がります。

コール・アンソニーの実力はドラフト上位指名に値するのでしょうか。

プロフィール

氏名コール・アンソニー
カレッジノースカロライナ大
学年フレッシュマン
生年月日2000年5月15日
ポジションPG
出身校オークヒルアカデミー
(バージニア州)
主な個人賞マクドナルドオールアメリカンMVP
ジョーダンブランドクラシックMVP
フープサミットMVP
特記事項父は元NBAプレーヤーのグレッグ・アンソニー。
AAUではモハメド・バンバとチームメイト。
ジュニアまでプレーした高校ではモーゼス・ブラウンとチームメイト。
長所・1対1の強さ
・終盤でのエース気質と勝負強さ
・優れたボールマンディフェンス
懸念事項・球離れが悪い
・ゲームコントロールは向上の余地あり
・シュートセレクションの悪さから来る低い生産性
・身体的には平凡

身体測定結果

靴有身長(cm)裸足身長(cm)体重(kg)ウイングスパン(cm)スタンディング
リーチ(cm)
備考
コール・アンソニー190.5185.483.5195.6241.32018USAジュニアキャンプでの数値
PG平均189.0185.784.1198.2247.22015-2019のドラフトコンバイン平均

スタッツ

出場時間(分)FG%3PT%FT%OFF RebDEF RebREB
34.93834.8750.55.25.7
ASTBLKSTLPFTOPTS
4.00.31.32.93.518.5
※シーズン通算スタッツに更新

アドバンスドスタッツ

USG%OFF RTGDEF RTG+/-TS%OFF REB%
29.90%99.4101.7-2.3050.70%1.50%
DEF REB%REB%AST%STL%BLK%TO%
17.90%9.50%23.90%2.20%0.90%16.10%
※シーズン通算スタッツに更新

ハイライト

高校No1ガードとして鳴り物入りでUNCへ

高校時代は、下級生の頃から注目を集めてきたコール・アンソニー。AAUではモハメド・バンバ、所属高校ではモーゼス・ブラウンとNBA級のビッグマンと共にプレーしてきました。2018年夏にはUSA代表メンバーとして、U18アメリカ選手権に出場し、主力ガードとして大会制覇に貢献し、大会ベスト5にも選出されています。

2018-2019シーズンからは全米から強豪を招待して開催される実質的な全米No1決定戦であるGEICOナショナルズ優勝を目指し、バージニア州の強豪、オークヒルアカデミーに転校。予定通りにGEICOナショナルズへの出場を果たすも、準決勝で敗退し高校バスケでのキャリアを終えます。

シーズン終了後には、高校バスケの3大オールスター戦であるマクドナルドオールアメリカン、ジョーダンブランドクラシック、フープサミットに出場し、その全てでMVPを受賞。高校No1プレーヤーとしての地位を不動の物とし、鳴り物入りでノースカロライナ大に進学しました。

プレーだけでなくメディアからの注目度も高く、米バスケットボール専門誌のSLAMでも、高校生にして表紙を飾ったカリスマです。

UNCのスタイルにフィットせず苦しいシーズンに

カレッジデビュー戦で前年にRJ・バレットが叩き出したカンファレンスのデビュー戦得点記録を塗り替える34得点を叩き出し、順風満帆なシーズンを予感させたアンソニーでしたが、その後は思い通りにいかないシーズンを過ごします。

その要因としてはアンソニーのスタイルとUNCのスタイルがフィットしていなかった事が挙げられます。

本来、UNCは"カロライナブレーク"と呼ばれる自由度が高く、速いテンポのオフェンスを得意とするチーム。しかし、コール・アンソニーはボールをキープし、テンポをコントロールすることを好み、アンソニーのテンポとチームのテンポに不一致が。

その結果、UNCのペースは

2018-2019:75.0=NCAA7位
2019-2020:69.9=NCAA116位

と昨季から大幅に低下。UNCの生命線のリバウンドは

2018-2019:57.0%=NCAA5位
2019-2020:55.6%=NCAA16位

とそこまで落ちていないにも関わらずです。

今季のUNCは、昨季の主要なスコアラー全員がアーリーエントリーや卒業でチームを去り、選手層がガタ落ち。UNCの自由度が高いスタイルは各ポジションにタレントが揃った時に力を発揮するスタイルで、5人のマクドナルドオールアメリカンを擁した2016-2017シーズンには全米王者に輝いていますが、タレント層が薄かった事も今季のUNCが不調だった要因です。

コール・アンソニーを除き、UNCには個人の力で展開を打破する選手が不在。その為、彼の負担が大きくなり無理なシュートが増え、FG成功率が下がり、チームにも悪影響をもたらしました。

チームが勝てなかった事で、コール・アンソニーの実力に疑問の声も上がりましたが、UNCが勝てない要因はチームスタイルへの不適合や、タレント不足に因るところが大きく、彼個人の実力不足を示すものではありません。

昨年のドラフトで1巡目10位指名を受けたキャメロン・レディッシュもデューク大の役割にフィットせず、シーズン前から評価を大きく落としましたが、NBAではルーキーシーズン終盤に覚醒の予兆を見せています。

カレッジで予想通りの活躍をしなかったからと言って、アンソニー個人の力を低く見積もってはいけないでしょう。

2ウェイプレーヤーとしてNBAで通用するか?

シューティング、ハンドリング、パッシングとオフェンスでは高いレベルのスキルを備えるアンソニー。

ゲームメイクは特に評価を受けていませんが、ワイドオープンのチームメイトに適切なパスを供給する視野の広さとパスの技術を見せていました。今季のノースカロライナ大にはそのパスを決めるプレーヤーが不在だった為、アシスト数は伸びませんでしたが...

ハンドリングの技術も高く、ヌルヌルとした独特のドライブが魅力。ディフェンスを一瞬で抜き去るクイックネスこそないけれど、ディフェンスからファールを引き出す技術も持ち合わせ、ここぞという場面ではフリースローを獲得していました。

当たりハズレこそ大きかったものの、アウトサイドシュートも勝負強さを見せました。シュートセレクションには難があり、タフショットを連発しFG成功率は低いものの、勝敗が決する場面でミスを恐れずゴールを狙う姿はフレッシュマンながらリーダーとして頼もしさを感じさせてくれました。

アンソニーのプレーで過小評価をされているのがディフェンス。1対1ではオフェンスをシャットアウトし、オンボールディフェンスに優れます。助走有りの垂直跳びでは109.2cmと高い数値を記録し、カレッジでも時にダイナミックなブロックを見せてくれました。

裸足身長、ウイングスパン、スタンディングリーチは全てコンバインの平均以下である点は、NBAレベルで優れたディフェンシブプレーヤーになる上での懸念事項でしょう。

カレッジのフレッシュマンとしてはハイレベルにまとまっているコール・アンソニー。今の所、NBAレベルで傑出した"何か"は見えませんが、チームを勝利に牽引する強いリーダー気質を持つプロ向きのプレーヤーです。

チームの中心を選ぶのであればコール・アンソニー

今年のドラフト上位指名候補にも名前が挙がるコール・アンソニー。

アンソニーはノースカロライナ大のチーム成績や安定しないシューティングで評価を下げましたが、その実力は10位内での指名に値するでしょう。(勿論、指名順位は指名権を持つチームの需要に左右されますが...)

彼の残したシーズン平均18.5得点は、前年にUNCのフレッシュマン通算得点記録を更新したコービー・ホワイトの16.1得点を上回ります。カレッジでは"期待外れ"との印象の強いアンソニーですが、それでもフレッシュマンとしてはUNC史に残るレベルの数字を残した点を見逃してはいけません。

エース気質のメンタリティもあり、チームの中心となるガードを探しているのであれば、それはコール・アンソニーでしょう。